平均計算は「割ってあまりを見る」だけ
やることは1つです。目数を、増減の回数で割る。そしてあまりの回数だけ、間隔を1目広くする。それだけで均等に散ります。
手順
- 基準になる目数を、増減の回数で割る → 商 q と あまり r が出る
- r 回は「(q+1) 目ごとに1回」
- (回数 − r) 回は「q 目ごとに1回」
あまりが出ないなら全部同じ間隔、あまりが出たぶんだけ少し広い間隔を混ぜる。これが「均等に散らす」の正体です。
実例:114目を88目に減らす
減らす数は 114 − 88 = 26回。基準にするのは小さい方(88目)です。
- 88 ÷ 26 = 商3、あまり10
- あまりの10回 → 4目ごとに1回
- 残りの16回 → 3目ごとに1回
ただし、編み図や教本の表記はこれと1つずれます。教本は「いま手に持っている段」=編む前の114目を数えるからです。減目では間隔がそれぞれ +1 になります。
編み図に書く形
4目ごとに1回 × 16回 / 5目ごとに1回 × 10回
検算:4×16 + 5×10 = 64 + 50 = 114(=編む前の目数)✓
なお実際の編み図では、共通の約数でまとめて「4目ごと8回・5目ごと5回、を2回くりかえす」と書くこともあります。中身は同じで、こちらの方が編みながら数えやすい形です。
この検算が、いちばん確実な確かめ方です。間隔×回数の合計が編む前の目数に一致すれば、その手順は破綻していません。
なぜ解説サイトごとに数字が違うのか
ここが、調べていていちばん混乱するところだと思います。同じ「114目→88目」でも、「3目ごと16回・4目ごと10回」と書いてある解説と、「4目ごと16回・5目ごと10回」と書いてある解説があります。
結論から言うと、どちらも間違いではありません。違うのは数え方だけです。
| 数え方 | 基準にする段 | 114→88 の書き方 |
|---|---|---|
| 編む前の段を数える(教本・編み図の流儀) | 114目 | 4目ごと16回 / 5目ごと10回 |
| 編んだ後の段を数える | 88目 | 3目ごと16回 / 4目ごと10回 |
編み方としてはまったく同じで、表記が1つずれているだけです。どちらの流儀で書かれた解説かは、合計を計算すれば一目でわかります。合計が114(編む前)ならば前者、88(編んだ後)ならば後者です。
私はこのアプリを作るとき、最初「大きい方の目数を割る」で実装しました。全パターンをシミュレーションして目数はぴったり合ったのですが、参照した実装の出力とは1目ずれていました。シミュレーションが通っても正解とは限らない、というのがここでの学びです。
増し目のときは、+1しない
ややこしいのですが、増し目と減目で扱いが違います。「増し目は減目の裏返し」と考えると間違えます。
理屈は同じ「いま手に持っている段を数える」なのですが、増し目のときは、その手に持っている段がすでに小さい方だからです。だから増し目では +1 が要りません。
実例:110目を130目に増やす
増やす数は20回。基準は小さい方の110目。110 ÷ 20 = 商5、あまり10。
→ 5目ごと1回・6目ごと1回、を10回くりかえす(=5目ごと10回 / 6目ごと10回)
検算:(5+6) × 10 = 110(=増し目前の目数)✓
減目のときは「編む前=大きい方」、増し目のときは「編む前=小さい方」。どちらも合計が編む前の目数になるという一点で一貫しています。
端に増減目を置かない
計算が合っていても、そのまま端から配置すると仕上がりが落ちます。編み地の一番端は綴じ代になるため、そこに増減目が乗ると縫い合わせたときに響きます。
実務では両端を半端な平目にして、増減目が端に来ないよう内側に寄せます。計算で出るのは「何目ごとに何回」までで、その配置の作法までは電卓は教えてくれません。
ゲージから目数・段数を出す
そもそもの目数は、スワッチ(試し編み)のゲージから出します。
- 目数 = ゲージの目数 × 幅(cm) ÷ 10
- 段数 = ゲージの段数 × 丈(cm) ÷ 10
たとえば10cmあたり20目28段のゲージで、幅50cm・丈60cmを編むなら、100目 × 168段。ここが出てはじめて、袖ぐりや肩下がりの割り出しに進めます。
毛糸の必要量も、スワッチから比例で出せます。必要量(g) = 編む面積 ÷ スワッチの面積 × スワッチの重さ。実際には毛糸は少し多めに用意しておくのが安全です。
この計算を自動でやる無料アプリ
手順そのものは難しくありませんが、1着ぶんで何十回も出てくるのが本当の負担です。そこを機械にやらせるために、「アミドリア」という無料アプリを作りました(このサイト GRAMSHIFT の制作物です)。
- 🧶 目数を入れるだけで平均計算。「何目ごとに何回」を、編み図と同じ書き方で出します。
- 📐 ゲージからの割り出し、袖ぐり・肩下がり・袖山などの計算にも対応。
- 🧵 スワッチから毛糸の必要量も計算できます。
- ✅ 出した手順は1目ずつシミュレーションして目数が合うことを確かめてから表示しています。合わない手順は出しません。
まとめ
- 平均計算は「目数 ÷ 回数」の商とあまりだけで決まる。あまりの回数だけ間隔を1目広くする。
- 基準にするのは小さい方の目数。114→88なら88で割る。
- 編み図の表記は「編む前の段」を数える。減目では間隔が+1、増し目ではそのまま。
- 間隔×回数の合計が「編む前の目数」になれば、その手順は正しい。ここが唯一の検算。
- 解説ごとに数字が1つずれるのは数え方の流儀の違いで、どちらも間違いではない。
- 端は綴じ代。増減目を端に置かない。