基本の式はこれだけ

精油の希釈は、たった1本の式で決まります。

必要な滴数 = キャリアオイルの量(mL) × 濃度(%) ÷ 100 × 1mLあたりの滴数

1mLを20滴とみなすなら、こうなります。

ここまでは、電卓があれば誰でも出せます。問題はこの次です。

「割り切れない」ときに、実際の濃度はいくつになるのか

先ほどの式は、たいてい小数の滴数を返します。10mLを1.5%にしたければ 10 × 0.015 × 20 = 3滴ちょうどですが、たとえば15mLを1.5%なら 4.5滴。0.5滴は落とせません

ここで4滴にすると、実際の濃度は 4 ÷ 20 ÷ 15 × 100 = 約1.33%。5滴にすれば約1.67%狙った1.5%にはどうやってもならないわけです。

アロマの安全性で標準的に参照される Tisserand & Young『Essential Oil Safety』でも、滴数はつねに近似であると明記されています。だから本当に知るべき数字は3つあります。

3つ目を見ないまま「上限2%だから4滴」と決めると、容器が小さいほど上限を超えます。5mLのロールオンで1滴増やすと、濃度は1%ぶん動きます。小さい容器ほど1滴の重みが大きい——これが希釈計算でいちばん見落とされる点です。

「1滴」は何mLか — ここが最初のズレ

計算の前提になる1mLあたりの滴数は、一般に20滴として扱われます。ただしこれは決まった物理量ではありません。

厳密さが要る場面では、自分のボトルで数滴を量ってみるのが確実です。「20滴=1mL」はあくまで出発点だと思ってください。

何%にすればいい? — 使う人で上限が変わる

濃度の目安は「肌に何を乗せるか」ではなく「誰の肌に乗せるか」で変わります。以下は NAHA の安全ガイドラインおよび Tisserand & Young『Essential Oil Safety』に基づく一般的な目安です。

対象一般的な上限の目安
大人(体に使う)2%
大人(顔まわり)1%
高齢者1%
妊娠中1%(専門家への相談を推奨)
6〜15歳2%
3〜6歳1%
3か月〜2歳0.25%(専門家への相談を推奨)
3か月未満局所使用を避ける

妊娠中と小児については流派によって考え方に差があります。ここに挙げたのは広く参照される目安であって、唯一の正解ではありません。迷ったら低い方に寄せるのが安全側の判断です。

柑橘の落とし穴:光毒性には「濃度の上限」がある

ここが、濃度の目安だけ見ていると落ちる穴です。圧搾法(expressed)で採られた柑橘系の精油には光毒性があり、肌に残したまま日光に当たると反応が起きることがあります。そのため精油ごとに、皮膚に残す製品での上限が定められています。

精油皮膚に残す製品での上限
ベルガモット(圧搾)0.4%
ライム(圧搾)0.7%
ビターオレンジ(圧搾)1.25%
レモン(圧搾)2%
グレープフルーツ(圧搾)4%
ベルガモットFCF/スイートオレンジ/マンダリン光毒性の対象外とされる

注目してほしいのはベルガモットの0.4%です。「大人だから2%でいい」と思ってブレンドすると、この1本だけで5倍の超過になります。しかも上限は精油ごとにばらばらで、覚えきれるものではありません。

なお、洗い流す製品(石けん・シャンプーなど)はこの上限の対象外です。また水蒸気蒸留で採られたものや、ベルガプテンを除いたFCFは光毒性の対象外とされています。同じ「ベルガモット」でも製法で扱いが変わる、ということです。

数字が確定しないものに、それらしい数字を書かない

精油の中には、刺激性が知られているのに、出典で上限%が確定していないものがあります。シナモンやクローブのような、いわゆる「熱い」精油です。

こういうとき、表を埋めたいからといってそれらしい数字を置くのがいちばん危ないと考えています。数字があると人は信じてしまうからです。数値が確定しないものは、数値を作らずに「注意が要る」とだけ伝える。私は自分のアプリもその方針で作りました。この記事も同じです。

計算のほうは、道具に任せていい

ここまでの話をまとめると、毎回やるべきことはこうなります。

4つ目まで毎回やるのは、正直きついです。そこを機械にやらせるために、私は「Dilutoria(アロマ希釈計算機)」という無料アプリを作りました(このサイト GRAMSHIFT の制作物です)。

※ アプリも本記事も計算と参考情報のためのものです。医療機器ではなく、診断・治療・予防を行うものではありません。数値は一般的な目安であり、安全を保証するものではありません。

まとめ

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